今日からあっという間に10月。パリは天気も良く心地のよい気候が続きますが、朝晩は冷え込み、秋が深まってきました。新学期が始まり、少し経ち落ち着いてきたので、この夏の思い出を少し振り返ってみようかと思います😌
今回のブログのタイトルを"Les sons et les parfums tournent dans l'air du soir" (ドビュッシーの前奏曲集第一巻の4曲目の標題)日本語訳"音と香りは夕暮れの大気に漂う"としたのは、この夏南フランスを訪れ夕暮れの野外コンサートで感じた体験がまさにコレだったからです♩
南フランスを訪れた目的はニースで毎年開催される夏期国際音楽アカデミーへの参加の為でした。ピアノも含め様々な楽器の総勢50人以上の一流教授陣が集い、レッスン受講にコンサートにと音楽漬けの一週間を送ることとなります!私は、今回幸運にも念願のミシェル・ベロフ氏のクラスにて学ぶことができ、素晴らしい経験をさせて頂くことができました。
ミシェル・ベロフ先生を始めて知ったのはもう15年以上前の中学生のとき。初めてフランス音楽に触れ、モーリス・ラヴェルの曲をコンサートで演奏することになったのですが、当時、NHKのスーパーピアノレッスンという番組が放送され、(有名ピアニスト"先生"がその作曲家が活躍した都市にて音楽院に通う若いピアニスト達"生徒"に、特別レッスンをする様子を放映するという番組)、それに合わせてフランス音楽の回ではベロフ先生のアドバイスがまとめられた解説付きの楽譜本も出版され、非常に参考にしながら練習を頑張っていました。この番組の受講生たちは日本人も多かったのですが、後に有名音楽大学の先生になられて今活躍されてるピアニストとなっております🎹
それから時を経て私はフランスに留学し、さらにフランス音楽を深めている中、ふとこのNHKピアノレッスンのことを思い出しました。そしてSNSで検索すると、YouTubeにて当時の番組の動画がアップロードされているのを見つけ…😳!
ベロフ先生のレッスンを今改めて見ると本当に素晴らしすぎて、(特にオススメはドビュッシー/前奏曲集第一巻の10曲目沈める寺の回、そしてサティ/金の粉の回。)
当時のレッスン本も実家に長い間眠っていましたが、パリまで送ってもらい、今は生徒さまと共有したりかなり重宝しています♩
ちなみにショパンの会でシプリアン・カツァリス氏によるレッスンを受講しているのは東京音大時代の恩師、稲田潤子先生。そのレッスンも拝見させて頂きました✨
自分がベロフ先生のレッスンを受講できるとは夢にも思っていませんでしたが、2023年夏、ついに叶ったのです🥹!番組でも取り扱われていた、ドビュッシーの沈める寺をはじめとする前奏曲集より数曲、映像第一集、第二集と沢山の曲のレッスンを受け、音色の引き出しや考え方の幅もさらに広がりました。
アカデミーも終盤に差し掛かった頃、ニース丘の上の修道院の中庭にて開催される野外コンサートを聴きに行きました。この日のプログラムはブルーノ・リグット先生によるショパンのノクターン全曲。
ニースは日中は強い日差しが降り注ぎ、かなり暑いのですが、夕暮れとなると外でのコンサートも気持ちよく聴けるくらいの気温へと落ち着きます。何より木々のざわめく音や、鳥のさえずり、鐘の音...自然が織りなす音と混じり合いながら、まさに今この場でしか生まれない音楽がここにはあるんだという事を肌で感じました。
夕暮れから刻々と深い夜に移り変わっていく会場の雰囲気と、その夜の演奏曲目がノクターン“夜想曲”という素晴らしい偶然に、なんとも言葉で表せない心が満たされる気持ちになりました。
ほとんど日も落ち、少し冷んやりとしてきて風も出てきた頃、ふとラベンダーの香りを感じました。あれ?ラベンダーなんて咲いていたかな?お隣のムッシューの香水かな...?と考えながらふと中庭横を見ると何本かラベンダーが植えられていました。夜風に乗ってこちらまで届いてきたんだな、と想いながら、"Les sons et les parfums tournent dans l'air du soir"このタイトルが頭に浮かびました。
ノクターンを聴きながら夕暮れの大気に漂う香りを感じ、夜へと移り変わる時の流れを感じるというなんとも贅沢な時間はあっという間のひと時でした。
アカデミー期間中は空き時間、ニース市内のシャガール美術館やマティス美術館に訪れたり…旧市街の街散策や丘からニースの海岸線を望む絶景を楽しみました。
セミナー終了後は数日コート・ダジュール地方に滞在して、ひとり旅も満喫しました。
今回訪れた街をザッと紹介すると、Menton(マントン)、Grasse (グラース)、Èze(エズ)、Vence(ヴァンス)、Saint-Paul-de-Vence(サン=ポール=ド=ヴァンス)、Cannes(カンヌ)、Antibes(アンティーブ)、Villefranche-sur-Mer(ヴィルフランシュ=シュル=メール) 、Cagnes-sur-Mer(カーニュ=シュル=メール)そして、Monaco(モナコ公国)...などなど、日程にぎゅーっと詰め込み今回も相当ハードに動き回りました。
私の街巡りは少し個性的(?笑)と言いますか、とにかく小さな道へ小径の方へ…誰もいかなさそうな住宅街の方へと歩きます。そしてその村のお家の壁の質感や色合い、表札や玄関のデザイン、ガーデニング、オブジェなどを見るのが好きなのです😌🤍
南仏の村に生まれたら、生まれた時から美しいものに囲まれ、自然と触れているんだな〜とつくづく感じます。
今回の旅で印象的だったのは最初に訪れたMenton(マントン)。南仏らしい鮮やかなオレンジ色の壁に、快晴の夏空、緑色やピンクの草花が街中に植えられ、気分がパッと晴れやかになりました。
そしてもう一つは香水の街と呼ばれるGrasseグラース。街中が、有名な香水ブランドのFragonardフラゴナールの雰囲気そのもので、ピンク色の傘の飾りも可愛らしくオシャレでシャッターが止まりませんでした📷💦
香水博物館もすごく良かったです🧴
また、ひとりでレストランに入るのも全然抵抗ないタイプなので、ブイヤベースや南仏郷土料理も満喫しました🥰
セミナーで聴覚が研ぎ澄ませたのはもちろん、視覚、嗅覚、味覚…と五感が刺激される10日間でした。
南フランスには昨年Marseille(マルセイユ)を中心にプロバンス地方やリュベロン地方も訪れたのですが、その土地の特性が生かされた村々は建物の色合いも村によって違ったり、どこも本当に素晴らしく…
いつか南フランスにも小さなアトリエを持ち、ベヒシュタインとはまた違う個性のあるピアノを入れたいな〜なんて夢も膨らみました。
また、この夏の思い出でいえばもう一つ!
実はモロッコ🇲🇦にも訪れていて、こちらもまた違った大冒険をしてきました。
私が滞在した後にはなりますが、モロッコでは巨大地震もあり…日本以外の場所で地震をこんなに身近なものとして感じるとは思ってもいませんでしたが…💦
私がこの夏訪れたのは震源から離れた北部の海沿いの街でした。
ドビュッシーのアラベスクを度々演奏する機会も多いですが、モロッコのアラベスク模様の伝統工芸、卓越した装飾芸術には感銘を受けました。
芸術に繋がる部分も沢山あるのでモロッコ旅行記もいつか載せられたらいいなと思います💙
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